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私は個人事業主です。法人成りを検討している昨今、経営者仲間から合同会社を薦められました。全く考えていなかったため詳しく聞くと、「GAFA」も合同会社だし、何より設立費用が抑えられるとの事でした。これからの時代、合同会社を設立すべきでしょうか。

2022/08/05 [08月05日号掲載]

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株式会社は株主が出資して会社を所有し経営は役員が行う、所有と経営が分離しているのが特徴です。対して合同会社は、出資者=経営者の会社です。株式会社と合同会社双方にメリット・デメリットがあり、一概にどちらの方が優れているということは言えないため、将来的な事業展開、資金調達手段、会社形態による対外的イメージ等を検討したうえで、合同会社を設立すべきか選択してください。

 

 

合同会社とは

 合同会社は、米国のLLC(Limited Liability Company)という会社形態をモデルに2006年、日本で導入されました。日本版LLCなどと称される合同会社は徐々に浸透し、2021年度新設法人の4社に1社を占めるまで上昇しています(東京商工リサーチ調べ)。

 合同会社の最大のメリットとして、御質問のとおり設立費用が抑えられる事があります。

 例えば、資本金300万円で会社を設立する場合、登録免許税、定款認証手数料で14万円の差が出ます。また、合同会社の場合、決算公告が不要ですし、役員任期がなく重任登記が不要のため、ランニングコストも抑えられます。しかし、これは閉鎖的な会社形態であることを意味し、株式会社に比べて信頼性が低く見なされ、認知度も劣っている現状です。

 意思決定プロセスに制限がないというのも合同会社のメリットです。定款内容の自由度が株式会社よりも高いため、出資比率に関係なく利益配分が出来る等個々の事情に応じた定款を作成できます。対してデメリットは、株式発行による幅広い資金調達ができないことです。株式会社は、広く出資者を募ることができるので資金調達がしやすく、出資者を守るため法律で厳しく規制されています。

 

大手外資の日本法人が

「合同会社」に乗換えるメリットは

 GAFA。世界に名立たる巨大IT企業Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字をとった言葉です。そのうちFacebookを除く3社の日本法人は、株式会社から合同会社に組織変更しています。資金力があり、既に知名度は高いため、合同会社のデメリットとは無縁であり、意思決定の速さや容易さ等、合同会社のメリットを最大限に活かす、まさに最適解です。

 また、親会社が米国にある場合、日本にある子会社が合同会社だと米国税制上、日本では認められていないパススルー課税制度を選択することが可能となるため、親会社が税務上のメリットを享受することも考えられます。

 

株式会社と合同会社とで迷ったら

 合同会社も増加傾向とは言え、株式会社に比べて信頼性が低く見なされ、認知度も劣っている現状です。そのため、法人向け事業(BtoB)や国、行政、地方自治体とのビジネス(BtoG)を行う業種であれば、社会的信頼度の高い株式会社の方が有利といえます。

 しかし、一般消費者を対象とするビジネス(BtoC)では顧客が会社形態を考慮しないため、カフェやサロン、介護、IT等個人向けサービスは、合同会社で設立するメリットが大きい業種といえます。また、LLCとして海外では認知度が高いため、海外取引が多い会社では合同会社を選択するのもお薦めです。

 設立後の組織変更(合同会社から株式会社に変更、またはその反対)も可能ですが、手続きには費用と時間がかかりますので、設立前に十分な検討をしてください。その際に迷われたなら、1度お近くの司法書士に御相談なさることをお勧めします。

 

司法書士佐野裕司事務所

富士市厚原1920番地の20

司法書士 佐野裕司 氏