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私は製造業を営む会社の代表取締役です。この度、株主総会を開催するにあたり各株主へ開催通知を送ったところ、株主の相続人より「父が亡くなった」との連絡がありました。どのように対応すればよろしいでしょうか。

2023/03/05 [03月05日号掲載]

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株式を保有する方が亡くなった場合、相続人は被相続人の株主たる地位を承継しますので、株式を相続した相続人から、株主名簿の書換え請求をするよう連絡する必要があります。

 

 

株式の相続

 相続人が複数であり、遺言書もない場合、被相続人が保有する株式は相続人の準共有状態(所有権以外の権利を共有すること)となります。例えば、被相続人の有していた株式が40株で、相続人が妻と子供2人であった場合、妻2分の1、子供たちは各4分の1の割合で40株を保有することになります。自動的に妻が20株、子供たちが10株ずつを相続するわけではありません。このような場合は、原則、相続人間で遺産分割協議を行い、株式を相続する人が決まらなければ株主としての権利を行使することができません。

 会社は、分割協議成立後、株式を相続した相続人から会社に対して株主名簿の書換え請求をするよう連絡すべきです。ただし、協議がまとまらないなど時間を要する場合、例外的に、相続株式の持分の割合に従い、その過半数をもって権利を行使する代表者を定め、会社に通知することで権利を行使することができるので、その旨を相続人にお伝えしてもよいでしょう。

 

相続人に対する

    株式売渡請求

 一方、会社としては、会社にとって好ましくない相続人が株式を取得することもあり得ます。前述のような分割協議が整えば、会社としては株主名簿の名義書換請求を拒否することができないのです。

 これを防ぐためには、譲渡制限株式を発行している会社であれば、定款に相続人等に対する株式売渡し請求権に関する条項を定めておくことで、相続人から当該株式を取得することができます。一つの例として「当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。」と定めておくのです。

 

経営者保有株式の場合

 株式を持つ会社経営者に相続が発生した場合、家族間で誰が相続するか揉めてしまうこともあります。このような場合、経営者が決まらないどころか会社の経営自体もうまくいかなくなってしまう可能性もあります。それを避けるには、大株主である経営者は、きちんと後継者を決めて誰に株式を相続させるか遺言を残しておいたり、無議決権株式といった種類株式の活用、中小企業経営承継円滑化法を利用した事業承継を検討しておく等の対策をしておくと良いでしょう。

 株式に関する相続が発生した場合や、事前の対策などのご相談はお近くの司法書士へお問い合わせください。

 

司法書士山中敬弘事務所

焼津市中根170番地の2

司法書士 山中敬弘 氏