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私は個人事業を営んでいます。私には前妻との間に息子が2人おり、長男が事業の跡継ぎです。長男に事業用資産、預貯金は現在の妻に、不動産は次男に相続させたいと思っているのですが、私の希望どおり遺産を分けることはできますか。また、次男に自宅を相続させると、妻が住み続けられるか心配ですが大丈夫でしょうか。

2020/03/05 [03月05日号掲載]

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相続人に特定の相続財産を承継させるために遺言をし、それぞれの財産を長男、次男、妻に相続させることができます。また、遺言の中で妻に配偶者居住権を遺贈すれば、自宅の所有権は次男にありながら、妻は変わらず自宅に住むことができます。

 

相続財産の分割方法を指定するために、遺言書を作りましょう。

 遺言書を作ることにより、どの財産を誰に相続させるのかを指定することができます。一般的な遺言の方式は、公正証書遺言と自筆証書遺言です。それぞれの特長についての解説は割愛しますが、自筆証書遺言については民法改正によりその方式が一部緩和され、法務局による保管制度が今年7月に新設されます。

 

遺言で、妻に配偶者居住権を遺贈することができます。

 配偶者居住権は、今回の相続法改正で定められた新しい権利です(令和2年4月1日施行)。亡くなった方(被相続人)の配偶者が、被相続人の死亡時に被相続人名義の建物に住んでいた場合、配偶者居住権を取得することにより、その後も自宅に無償で住み続けることができます。

 この権利を得ることができるのは、被相続人の配偶者のみです。事実婚(いわゆる内縁関係)の場合は、この権利を得られませんので注意が必要です。また、配偶者は、決められた期間または終生にわたりこの権利を持ち続けられますが、他人にこの権利を譲ることはできません。配偶者が亡くなったときには、この権利もなくなり、相続されることもありません。

 配偶者居住権は、相続人間の遺産分割協議や、家庭裁判所における遺産分割審判によって取得することができるほか、被相続人が遺言によって「遺贈」することもできます。

 今回のケースでは、「事業用資産は長男に、自宅不動産の所有権は次男に、妻には預貯金を相続させる。また、妻には配偶者居住権を遺贈する。」という主旨の遺言を書くことができます。ただし、この遺言内容が有効となるためには、遺言が法律施行日(令和2年4月1日)以降に書かれたものでなければなりません。

 

配偶者居住権を相続人以外にも主張するには登記が必要です。

 実際に相続が開始した場合には、配偶者居住権を取得した配偶者は、自宅の建物に今までと変わらず住み続けることができます。ただ、このことを相続人以外の第三者に主張するためには、登記をする必要があります。配偶者居住権の登記は、相続による所有権移転の登記より先にすることはできませんので、相続登記と一緒に司法書士にご依頼ください。なお、所有権を得た相続人は、配偶者居住権を得た配偶者に対し、配偶者居住権の登記をする義務を負います。

 

配偶者居住権を得た配偶者ができること、できないこと。

 配偶者は、これまでの使用方法に従って建物を使い、住み続けることができます。また、日常的に建物の維持管理に必要な経費は、配偶者が負担します。配偶者は、善良な管理者の注意を払う義務がありますので、通常の使い方を逸脱して建物の価値を下げるような行為はしてはいけません。

 配偶者が、建物をリフォームしたいときや、第三者に使用させたいときには、所有者の承諾を得る必要があります。また、前述しましたが、配偶者居住権を誰かに譲ることはできません。

 

司法書士にご相談ください。

 配偶者居住権が制定された背景は、日本社会の高齢化の進展に伴い、高齢となった配偶者の生活保障の必要性が高まったためです。新たな制度の活用を含め、相続対策などのご相談は、お近くの司法書士事務所をお訪ねください。

 

司法書士法人 芝事務所

静岡市清水区宮代町9番15号

司法書士 望月路子