静岡の企業情報

ビジネス法務

個人事業をしていた父が亡くなり、私が相続人となりました。私は、父の事業にほとんど携わっておらず、父の資産状況や経営の状況が分かりません。私が父の相続をする際にどのようなことに注意したほうがよいでしょうか。

2023/09/05 [09月05日号掲載]

Pocket

まずは、財産の調査をしましょう。負債の方が多ければ、相続放棄を検討してください。相続放棄は、相続の開始を知ってから3ヶ月以内にする必要がありますが、財産の調査に時間がかかるようであれば、期間の伸長をすることもできます。

 

 

個人事業主に相続が発生した場合

 相続とは、亡くなった人のすべての財産を相続人が引き継ぐことをいいます。一部の例外はありますが、原則としては、プラスの財産(預貯金等)とマイナスの財産(借金等)を合算したすべての財産を引き継ぎます。

 そして、個人事業主に相続が発生すると、事業用の資産を含めて相続の対象となります。

 たとえば、事業を営んでいた店舗や事業用の預貯金口座、事業に関する借金等は、相続の対象となります。

 

財産の調査と相続

 相続の手続きを進めるためには、まずは財産の把握をすることが必要です。

 プラスの財産としては、預貯金、不動産、自動車、株式、家財道具、売掛金、事業用の資産などが挙げられます。これら財産は、通帳のある金融機関に照会をかけたり、確定申告書の控えを確認すること等が調査の手がかりになるでしょう。

 一方で、マイナスの財産とは、借入金、保証債務などが挙げられます。こちらは、借用書や借入残高が記載された書類などが残されていないかを確認しましょう。借入先がわからない場合は、信用情報機関に照会をすれば借入先を調べることができます。

 財産の調査を終えてプラスの財産の方が多ければ、相続をしても問題ないでしょう。相続人が複数名いれば、遺産分割協議(誰がどの財産を相続するか決めるための協議)を経て、各種財産の名義変更を行っていきます。

 

負債の方が多ければ

相続放棄を検討しましょう

 前述していますが、事業に関する負債は相続の対象です。負債の方が多ければ相続放棄を検討したほうがよいでしょう。

 相続放棄とは「初めから相続人とならなかったものとみなす」ことで、すべての財産の引き継ぎを放棄する手続きのことです。すべての財産の引き継ぎを放棄できるので、亡くなった人に負債があっても引き継いで支払う必要はなくなります。

 ここで注意する点は、相続放棄の申述期間です。相続放棄には、「相続の開始を知ってから3ヶ月以内」という期間制限があります。

 一般的な相続であれば、この期間内に遺産の調査を終えられます。しかし、亡くなった人が事業を営んでいた場合は、各取引先との売掛金・買掛金・金融機関からの融資、などを調査しなければならないため時間がかかります。

 もし、相続放棄の申述期間(3ヶ月)に調査を終えることができそうもなければ、家庭裁判所への申立てで相続放棄の申述期間を伸長することができます。

 

限定承認という方法

 限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を支払っていく相続の方法です。財産の調査をしても亡くなった人の財産がどの程度あるのか不明な場合に、有効な方法となります。

 限定承認は、裁判所を通じて債権者(被相続人にお金を貸した人)に公告を出す手続きなどを経ることで、被相続人のマイナスの財産を見つけていきます。

 見つかったマイナスの財産をプラスの財産で支払った後、残った財産を相続人が引き継ぐことになります。

 限定承認の注意点としては、かなりの期間がかかること、相続人の全員で家庭裁判所へ申述する必要があること、などが挙げられます。

 

適切な相続の方法を選択

 個人事業主をしていた方の相続手続きは、複雑で多岐に渡ることが多くあります。思わぬ不利益を被らないように慎重に手続きを進めてください。

 また、現在、事業を営まれている方は、残された相続人が困らないように、生前から相続の準備をしておくことをおすすめします。

 

みな司法書士法人

静岡市葵区追手町2番12号 静岡安藤ハザマビル4階

司法書士 川上直也 氏