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私(67歳)は会社を経営しています。そろそろ社長職を息子に譲りたいのですが、次のような希望があります。①そろそろ社長職を息子に譲りたいが、まだ息子の経営手腕に不安があるため踏み切れない、②私が病気や認知症になった場合に会社経営を停滞させたくない、のですが、これらの希望を叶える何かいい方法はありますか?

2023/11/05 [11月05日号掲載]

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民事信託を利用した事業承継を選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。民事信託を活用することで、会社経営の円滑な継続・後継者の選任権等も質問者様のご希望に沿わせることが可能です。また、質問者様が万が一認知症やご病気になってしまった時のリスク管理にも有効となります。

 

事業承継に民事信託を

活用するとどうなるのか?

 民事信託とは、資産を持っている人(委託者)が、信頼できる相手(受託者)に対し、資産を移転し、その受託者が特定の人(受益者)の為に、その資産(信託財産)を管理・処分することをいいます。また、信託が終了した際に信託財産の継承を受ける人を帰属権利者といいます。

 民事信託を活用すると、中小企業オーナー様の代わりに後継者が自社株式や事業用資産を管理できるようになります。会社の業務、人事権などの実権も後継者に渡すことができます。「後継者の変更」「会社の売却」「認知症やご病気」など、経営方針や状況が変わった場合にも柔軟な対応が可能となります。

 例として

①株式を贈与で渡すと非常に長い年月がかかってしまうので何とか対策をしたい。

②元気なうちに経営権を譲りたい(維持したい)。

③オーナーの死亡時にはあらかじめ定めた後継者に引き継ぎたい。

という方にご提案することができます。

 株式を後継者に信託し、会社の業務や人事権などの実権は後継者に移行します。株式は信託財産なので株を購入する資金は不要です。

 その後オーナー様が亡くなると株式が後継者様のものとなり、信託が終了します。

 このように会社の実権を譲りつつも、信託により経営を後継者に任せることができるので事前に後継者の手腕を確認することができます。

 

思いがけない認知症や

ご病気のリスクヘッジに

 もしも認知症やご病気でオーナー様が意思決定をできない状態になってしまうと会社運営に支障が生じてしまいます。

 自社株の議決権行使やM&Aによる株式売却等の事業承継対策の継続ができなくなり、将来の後継者や引き継ぎ先も決められず社内・親族内での争いの元にもなりかねません。

 事前に民事信託で後継者に会社の管理を任せておくことで、オーナー様に万が一のことが起こった場合にも会社経営を滞らせてしまう心配を減らすことができます。

 

ご自身の目で経営の見届け・

方針の変更が可能

 民事信託の大きな利点のひとつでもあるのが、会社の権利はあくまでオーナー様の元にあるという点です。

 「後継者が会社経営には不適格」「やはり会社を売却したい」とオーナー様が判断した場合、民事信託を解除することもできます。そして他の親族や社内役員に信託をすることも、会社を売却することも可能です。

 このように会社の権利がオーナー様の手元に残ることで会社経営への影響力も残しつつ後継者の経営を見届け、自身の納得する形で事業を承継することができます。

 

不測の事態への

安心と将来の選択肢

 事業承継に民事信託を活用することで、会社運営の方向性を決める時間的・金銭的な猶予をつくることができます。安心して会社経営を次世代に任せるためにもぜひ一度民事信託の活用をご検討ください。

 

岡田総合法務事務所

静岡市葵区古庄四丁目3番21号

司法書士 岡田智大 氏