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父が、平成25年5月1日に亡くなりました。相続人は、母、私、妹の3人ですが、遺産分割が調わないまま現在に至ります。令和5年4月1日から遺産分割についてのルールが変わったと聞きましたが、私はどのようなことに注意しながら遺産分割を進めたらよいでしょうか?

2024/04/05 [04月05日号掲載]

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原則として、令和10年4月1日以降は、特別受益や寄与分といった法定相続分を変更するための主張ができなくなりますので、令和10年3月31日までに、遺産分割協議を成立させるか、遺産分割を家庭裁判所に請求することをお勧めします。

 

 特別受益とは、相続人が被相続人から特別に受けた利益のことで、具体的には、遺贈、婚姻・養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与を指します。特別受益がある場合には、被相続人が相続開始時に有した財産の価額に、特別受益財産の価額を加えたものを相続財産とみなし、各相続人の相続分(法定相続分又は指定相続分)を乗じて具体的相続分を算出し、特別受益者については、特別受益財産の価額を差し引いたものを具体的相続分とし、特別受益の価額が具体的相続分の価額に等しいか、又は超過する場合には、特別受益者は、遺産分割によって相続財産を取得することができません。

 寄与分とは、①被相続人の事業に関する労務の提供②財産上の給付③被相続人の療養看護④扶養、財産管理等の方法により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人の取り分のことであり、共同相続人の協議で決めるのが原則ですが、協議が調わない場合、又は協議をすることができない場合には、遺産分割の審判の際、寄与者の請求により、家庭裁判所が一切の事情を考慮して定めることになっています。そこで、寄与者がいる場合には、被相続人が相続開始時に有した財産の価額から寄与分を控除したものを相続財産とみなし、各相続人の相続分(法定相続分又は指定相続分)を乗じて具体的相続分を算出し、寄与者については、これに寄与分を加えた額を具体的相続分とします。

 遺産分割は原則、法定相続分に従い一切の事情を考慮して行いますが、特別受益や寄与分を主張し、具体的相続分に沿った遺産分割を求めることができます。しかし、長期間未分割の場合、特別受益や寄与分の主張をしても証明が難しく紛争が長期化しがちであることから、民法が改正(令和5年4月1日施行)され、相続開始の時から10年を経過した後の遺産分割については、次の場合を除き、原則として、特別受益や寄与分の主張をすることができなくなりました。

⑴相続開始の時から10年を経過する時又は改正法施行の時から5年を経過する時のいずれか遅いときまでに、相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき。

⑵相続開始の時から始まる10年を経過する時又は改正法施行の時から5年を経過する時のいずれか遅い時の満了前6か月以内の間に、遺産分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅したときから6か月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき。

 本事例では、相続人間で合意がある場合には、法定相続分によらない遺産分割も可能ですが、他の相続人が法定相続分による分割を希望し、特定の相続人が被相続人から多額の生前贈与又は遺贈を受けていて、あなたが、法定相続分による分割に不満がある場合、或いは、遺産の維持増加にあなたの特別の寄与があり、貢献度を踏まえて遺産分割をしたいと考えている場合には、令和10年3月31日までに、遺産分割を成立させるか、家庭裁判所に遺産分割を請求する必要があります。なお、家庭裁判所において特別受益や寄与分を主張しても認められないことが多いため、長期間放置されている相続問題がある場合には、他の相続人に理解を求め、期限内に分割協議ができるよう、お早めに、お近くの司法書士にご相談されることをお勧めします。

 

鈴木司法事務所

静岡市清水区松原町8番3号

司法書士 鈴木久隆 氏