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取引先の代表取締役が入院中の病院で重要な契約を締結することになりました。脳に後遺症があるとのことですが、後日契約の効力を争われないために公証人に依頼する方法があるとお聞きしましたが。

2018/12/05 [12月05日号掲載]

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判断能力について主治医からの意見聴取などを行っておくとともに、契約締結の状況を保全しておくために公証人に立ち会ってもらう方法も考えられます。

 

 

判断能力の確認

 ご心配されているのは、取引先の代表取締役の判断能力かと思われます。契約当時、判断能力が欠けていたということになると、契約の効力自体が否定される可能性があります。したがって、取引先に依頼して診断書を提出してもらうか、主治医の意見を直接聞いてみてはいかがでしょうか。

 また、契約締結の状況を保全するために公証人に立ち会ってもらい、事実実験公正証書を作成してもらう方法もあります。

 

事実実験公正証書とは

 事実実験公正証書とは事実に関わる公正証書であり、公証人が自ら事実実験した事実を録取し、かつ、その実験の方法を記載して、写真撮影・録音・ビデオ撮影なども活用して記録に残す公正証書です。

 また、公証人が依頼者らの行う行為や状況を確認して、これを事実実験の実施状況として公正証書に記録することもできます。

 民事訴訟手続において、公正証書は真正に成立した公文書と推定され、高い証拠能力が付与されています。従って、事実実験公正証書は証拠保全の方法として活用することができます。

活用例

 事実実験公正証書はお尋ねのようなケースだけではなく、次のような様々な活用方法があります。

①書類(発明に関する資料、アイデア集、技術計算書類など)の封入保全

②開発中のシステム、ソフトウェアなどの封入保全

③ホームページにおける意匠などの無断使用の状況の証拠保全

④契約締結状況の証拠保全

⑤違法状態の確認

⑥携帯電話のメールの交信記録

⑦街宣車の宣伝活動の状況

⑧不法行為を承認する供述(会社内の横領行為など)

⑨放置自動車の状況

⑩死亡した建物賃借人の室内残置物の状況確認

⑪土地の境界の状況の証拠保全

⑫貸金庫の開扉

⑬尊厳死宣言

 

宣誓認証も活用を

 公証人の活用方法としては、事実実験公正証書の他に宣誓認証も知っておくとよいでしょう。宣誓認証は、私署証書や供述書の作成者が公証人の面前で証書に記載された内容が真実であることを宣誓し、公証人が認証したものです。従って、宣誓認証を作成した当時にその内容を公証人の面前で供述したという証拠保全機能があります。

 

公証制度のさらなる活用を

 我が国の公証制度は、関係者間に紛争が起きないように、あらかじめ法律関係や事実関係を整序し、証拠を保全して予防司法の役割を担っています。

 それに加え、公証制度を利用しておけば、仮に紛争が生じてしまった場合でも、証拠として的確に活用することができます。

 公証制度を上手に活用していきたいものですね。