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昨年10月に「水銀に関する水俣条約」というものが採択されたそうですが、国内の水銀廃棄物の処理はどうなってゆくのでしょうか?また、これに関連して、我々の身近な水銀廃棄物を含有する蛍光灯・乾電池の適正処理はどのように変わってゆくのでしょうか?

2014/11/20 [11月20日号掲載]

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「水銀に関する水俣条約」は確かに平成25年10月10日に熊本県で開催された外交会議にて採択されましたが、日本としてこの条約の批准(締結)はこれからであり、併せて国内法の整備が必要とされています。

 

 

 またこの条約は条約締結国が50カ国を超えた場合、その90日後に正式に発効することとなっています。

 水銀を含む蛍光灯・乾電池は未だに生産されていますが、メーカーによる削減努力や業界等の自主規制により、その使用が大幅に削減されています。また、LEDなどの水銀フリーの製品やボタン電池のひとつである酸化銀電池の無水銀化などの開発により、水銀を一切使用しない製品も世に出ています。しかしながら、依然として水銀を使用している旧製品が出回っており、その削減・処分・リサイクル・余剰水銀の保管方法等が問題となります。

 

①水銀に関する国際条約

 について

 内容として、大きな項目としては「水銀の供給と国際貿易の削減」・「製品への水銀使用の削減」・「製造プロセスにおける水銀使用の削減」の3点です。

 条約名に「水俣」が入ったのは、「水俣病を経験している国であることを踏まえ、条約制定に積極的に貢献したい」という日本政府の提案によるものです。

 国連環境計画(UNEP)は、2016年の条約発効を目安としています。

 

②蛍光灯と乾電池の適正処分

 について

 家庭から出る蛍光灯の回収にあたる市町村においては、蛍光灯の再資源化の取組みは一般廃棄物の減量という点からも重要な課題です。但し、ゴミの分別・適正処理を推進すればそれだけコストがかかるわけで、蛍光灯の再資源化についてもさらに知恵を集める必要があります。また、事業所から出る蛍光灯については、事業者の社会的責任において適正処理が求められますが、中小の事業所でも参加しやすいシステムの構築が求められています。

 ボタン電池に関しては、一般社団法人電池工業会が使用済みとなったボタン電池の回収とその適正処理(自主取組み)を行っています。登録された回収協力店に回収缶を配布し、そこに集まった使用済みボタン電池を定期的に引き取り、適正処理をしています。

 また、新たな動きとして、蛍光灯や乾電池に関して「デポジット制」の導入を図ることが提言されています。もともと提唱されたのは、「容器包装リサイクル法」の施行を機に、容器包装を対象としたものでした。

 今後は、乾電池・蛍光灯さらにはガスボンベ等の有害廃棄物に関しても、同様にデポジット制度の導入検討が全国各地の自治体にて検討されることが予想されます。

 

③最後に

 水銀条約が発効となれば、水銀の「発生」・「回収」・「リサイクル」・「輸出」・「保管」等のあらゆる分野にて大きな変化が予想されます。

 しかしながら、適正な「回収」・「リサイクル」という部分は現状においても有効かつ必要であり、これをベースに水銀ゼロ化への道を今後とも継続してゆくことが求められると考えられます。

 

静岡県行政書士会

沼津支部 杉山 幸一