静岡の企業情報

ビジネス法務

当会社は、会社法施行(平成18年5月1日)後、定款を変更して役員の任期を10年に伸長しました。その当時在任していた取締役Aは平成16年5月に就任していますが(3月決算、定時株主総会は事業年度終了後2ヶ月以内に開催)、任期はいつまでと考えればよいでしょうか?

2014/12/05 [12月05日号掲載]

Pocket

平成16年5月に就任した取締役Aの任期は、本来2年後の決算期に関する定時株主総会終結の時までなので、平成18年5月末までに行われる定時株主総会で任期満了退任となります。しかし、会社法施行後、任期満了までの間に定款変更を行い取締役の任期を10年に伸長していた場合には、この取締役Aの任期も10年に伸長され、平成26年5月に開催される定時株主総会終結時までとなります。

■役員の任期は10年まで伸長可能に

 平成18年5月1日に会社法が施行されてから8年が経過しました。この会社法では、全ての株式に譲渡制限の定めを設けている株式会社の取締役、監査役の任期については、選任されてから10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができるようになりました(旧商法では取締役2年以内、監査役4年以内)。

このことにより、役員構成をめぐってトラブルが発生する可能性が少なく、役員を変更する予定も無い株式会社については、任期を伸長する定款変更を行うケースが増えてきました。

 

■会社法施行日に現に取締役であ る者の任期

 ここで確認しておきたいのは、「会社法施行の日(平成18年5月1日)に現に取締役である者(以下、「在任取締役」という。)の任期」です。この点については、在任取締役の本来の任期満了の日までの間に任期を伸長する定款変更を行うことによって、特段の事情のない限り、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長可能とされました。よって、質問にある取締役Aは会社法施行時に在任していた取締役であり、任期満了(平成18年5月末までに開催される定時株主総会終結時)までの間に任期伸長の定款変更を行っていると思われますので、任期は選任時から10年に伸長されていると考えます。なお、この10年の起算点は、あくまで取締役選任の日であり、質問のケースでは平成16年5月となります。任期伸長の定款変更を行った日(平成18年5月)ではありませんので注意して下さい。

 

■「在任取締役」の改選はいつ?

 そうなると、10年という最長の任期を規定した会社の取締役でも、今年(平成26年)開催される定時総会終結をもって任期満了となるケースが出てくることになります。さらに、監査役に関しては、従来の法定任期が4年であったために、平成14年の定時総会で選任された監査役の在任中に任期を10年に変更していたケースも考えられます。その場合には、平成24年に開催された定時株主総会終結をもって既に任期が満了していることになります。

 任期を伸長することで役員変更登記のコストが軽減される一方で、登記手続きが必要になるのが10年に1度ということになると、任期満了による改選の年を忘れてしまい、登記が放置されてしまうことが危惧されます。登記は変更があった日から2週間以内に行わなければいけないとされており、これを怠った場合には過料が科される場合もあります。

 

■登記を放置すると「みなし解散」 の可能性も

 全国の法務局では、平成26年度に、休眠会社の整理作業を行います。最後の登記から12年を経過している株式会社は「休眠会社」として、みなし解散による整理の対象となります。平成26年11月17日②の時点で、上記に該当する会社は、平成27年1月19日②までに「まだ事業を廃止していない」旨の届出又は登記(役員変更等)の申請をしない限り、解散したものとみなされ、登記官が職権で解散の登記を行うことになります。

 役員の任期の確認をおろそかにしていると、知らない間に自分の会社が解散していたなんてことも起こり得ます。会社経営者の皆様、ご注意を。

桑原淑浩司法書士事務所

掛川市亀の甲1丁目14-7

司法書士 桑原淑浩 氏