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個人事業主であった父が亡くなり、私がその事業を引き継ぐことになりました。 相続した自宅の登記簿を見たところ、「根抵当権」の登記がされています。 「根抵当権」とは何でしょうか?「抵当権」と何が違うのでしょうか?

2015/05/01 [05月05日号掲載]

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根抵当権は、設定行為(設定契約)で定められた一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する抵当権の一種です。

■普通抵当権とは

 普通抵当権は、特定の債権を担保するために設定されます。例えば、あなた(債務者)が金融機関(債権者)から一千万円を借りて住宅を新築する場合、その住宅ローンを担保するため、不動産(自宅と自宅の敷地)に抵当権を設定するのが一般的です。

 

■根抵当権とは

 金融機関と会社・個人事業主のように、継続的に取引をしている者の間では、債権が発生・消滅を繰り返しています。これら複数の債権を担保する方法として普通抵当権を利用すると、抵当権の設定・抹消を連続的に行わなければならなくなり、手続きが煩雑になります。

 一方、根抵当権の場合は、極度額(後述します)を定め、契約時に担保する「債権の範囲(金銭消費貸借取引・保証取引など)」を特定することで、将来にわたって継続的に発生・消滅を繰り返す複数の債権を一括して担保することができます。

 例えば、あなたと金融機関との継続的な取引を担保するために根抵当権を設定したとします。その後、契約時に定めた債権の範囲内の債権1、2、3が次々と発生した場合、これらの債権を一括して根抵当権で担保することができます。弁済等により債権1が消滅した後は、債権2、債権3を担保する根抵当権となり、以後発生・消滅を繰り返す債権を、次々と担保することになります。

 

■「極度額」とは

 極度額とは、根抵当権により担保される債権の限度額です。根抵当権は、極度額の限度内であれば、元本だけでなく利息・損害金も担保します。 

◆「元本の確定」にご注意を

 根抵当権は、「元本の確定」により、不特定の債権を担保するという特質を失い、確定時に存在する債権のみを担保する根抵当権となります。したがって、元本確定後に発生した債権は、担保されません。

 債務者に相続が発生した場合、相続開始後6カ月以内に特定の手続きをとらなければ元本が確定してしまいます。設問のケースのように、亡くなった親の個人事業を子が引き継ぐときは、既に設定されている根抵当権の元本を確定させずに子が利用するといった場合も考えられます。

 そのようなときは、登記の専門家である司法書士にお気軽にご相談ください。

司法書士金子伸也事務所

藤枝市岡部町岡部28-7

司法書士 金子伸也 氏