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高齢を理由に退任する取締役Aから、退任後に取締役としての責任を追及されることがないことを確約して欲しいとの要望がありました。Aに対して責任追及しなければならないような事情はありませんので、Aがそれで安心するのであれば応じようと考えていますが、そういったことは法律的には可能でしょうか。

2017/09/05 [09月05日号掲載]

司法書士 青島学海さん

会社法には、総株主の同意により取締役の会社に対する損害賠償責任を免除することができるとする規定がありますので、当該規定に該当するようであれば、今回も責任の免除が可能です。また、取締役Aの退任の登記も忘れずに申請しましょう。

取締役の責任とは

 取締役は会社の経営に関する決定をし、決定したことを実行していくことがその職務とされており、法令や定款の規定並びに株主総会の決定を遵守し、会社のために忠実に職務を行う必要があります(忠実義務)。また、会社という自分以外の者のために活動しますので、自分のこと以上に細心の注意を払って職務にあたる必要があります(善管注意義務)。

 

自社に対する損害賠償責任

 この忠実義務や善管注意義務に違反し、会社に損害を生じさせた場合には、会社に対してその損害を賠償すべき責任を負うことになりますが、会社がその責任を免除することを決定し、これについて全株主から同意を得ることができれば、会社はその取締役の損害賠償責任を免除することができます。

 この規定は、取締役が義務違反をしたことが明らかになっているかどうかを問いません。本件の場合には、取締役Aについて忠実義務違反や善管注意義務違反の事実はないとのことですが、この場合にも全株主の同意を得るとともに、会社として責任免除の意思決定をすることにより、Aの要望に応えることができるのではないでしょうか。

第三者に対する損害賠償責任

 他方、取締役は、自社以外の第三者から損害賠償を求められることも考えられます。会社法には、取締役が、その職務執行について忠実義務違反や善管注意義務違反があることを認識しているか、認識していないとしても認識していないことについて重大な過失がありながら職務執行にあたり、それによって第三者に損害を発生させた場合には、その損害を賠償しなければならないとの規定があります。そして、この第三者に対する損害賠償責任については、たとえ全株主が同意したとしても、会社がその責任を免除することはできません。責任追及するのは会社ではなく損害を被った第三者自身ですので、当然と言えば当然のことですが、この点については注意が必要です。

 

退任の登記も忘れずに!

 なお、第三者に対する取締役の責任は、登記とも関連があることを忘れてはいけません。会社法は、取締役の退任については、登記をしなければ退任したことを知らない第三者に対して対抗できないと定めています。これは、会社と取締役との間では退任したことになっていたとしても、退任したことを知らない第三者からは、退任後も依然として取締役としての責任を追及されうるということを意味します。

 例えば、取締役Aが退任した後(かつ、退任の登記がされる前)に発生した事柄により第三者に損害が発生し、その第三者が取締役に対して損害賠償を求める場合には、登記簿に取締役として氏名が残っている取締役Aを相手方とすることもできることになります。

 第三者からの損害賠償請求は、自社の手続によって責任を免除することはできませんが、退任したときに速やかに登記をすることが、無用な責任を生じさせないためには必要不可欠です。

 取締役の退任の登記は、様々ある会社の登記の中ではそれほど複雑な手続ではありませんが、定款の規定や取締役の人数によっては後任の取締役が就任しないと退任の登記をすることができないこともあります。

 司法書士は登記の専門家であり会社法にも精通しておりますので、状況に応じて速やかに取締役の退任の登記をすることができます。ぜひお近くの司法書士をご活用下さい。

青島学海司法書士事務所

磐田市見付3758番地2

司法書士 青島学海 氏